【SURVIVE~血と汗と努力の結果魅せる新作”Immortal Warriors”リリースツアー初日・後編:SURVIVE】

(参照:https://www.facebook.com/survive333/photos/pcb.2185592388166947/2185592201500299/?type=3&theater

2019年2月11日。

日本のみならず、世界で活躍するヘヴィメタルバンド、SURVIVEの7枚目のアルバム”Immortal Warriors”リリースツアー初日。

その模様を2回に渡り振り返っていく。

 

前回の記事、HELL FREEZES OVER, HATTALLICA, IN FOR THE KILLはこちらでご確認頂きたい。

 

www.anotherstyle.net

 

 本記事では、メインアクト、SURVIVEの90分のドラマをお届けする。

今このツアーで観られるSURVIVEの魅力について、そして、彼らから学ぶ人生訓について、僕なりに書いてみる。

 

【SURVIVE】

 IN FOR THE KILLは突き抜けた、突き抜け切った。

ステージから飛び出した、その殺傷力に満ち溢れたパワーは、オーディエンスのメタル愛を怒りへとじさせ、闘争心をふつふつ沸かせた。

そんな興奮状態のフロアを横目に、天井から降りてきたスクリーンは、ステージを封じた。

 

ステージ上ではセットチェンジが始まり。

少しずつ。少しずつ。空気が冷たくなり、不穏な静けさが空間を支配し始めた。

これから始まるのは、メインアクトのライヴ。

フロアでは、詰めかけたファンが仲間同士と話し、酒を呑み、笑っている。

海外からのお客さんもいい笑顔。

賑やかでいい光景だ。

ただしかし、何かこう、冷たい空気というか、緊張の風が駆け抜けた気がする。

 

王者を前に。

5か月振りにステージに立つ王者を前に。

空気が変わった。

 

そしてステージには何やら大きなセットが、スクリーン脇から搬入されていく。

20周年ライヴを観に行っていた僕は、ピンときた。

そして1人心の中で、

「これは、えげつないショーになる」

と、確信していた。

スクリーンが上がり、ステージが露わになった。

これは、2018年9月にclub asiaで開催されたSURVIVE20周年と同じ。

新譜のジャケットを描いたバックドロップ。

そして、その絵と同じく、赤く燃え盛った様を描いたシールドをアンプ/スピーカーの前に設置し、世界を作る。

ダイナミックなSEは、銃撃・爆撃のオーケストレーション。

 

「ここは戦場か…」

 

そう、新譜のジャケットそのものの世界。

ステージ上は、火が、炎が燃え盛り、銃弾や爆弾が飛び交う戦場となった。

僕が感じた不穏な空気。

何か好ましくないことが起こる空気…それは戦場だった。

 

 

サポートドラムスの土間りょう氏。

リードギターのGAKU氏。

ベースのSHINJILOW氏。

そして、ヴォーカル・ギターのNEMO氏。

1人ずつ、メンバーが戦場に現れた。

目の周りを黒く塗り、黒い鎧を身に纏う。

ボロボロだが気高く闘う戦士のような佇まいは、いくつもの戦乱を潜り抜けてきた、兵士のよう。

 

ここは、日本なのか。

または、ターミネーターやマッドマックスで描かれた、核戦争で壊滅的になった世界なのか。

 

こうして、これまでの3バンドとは違った空気の様相を目の当たりにし、世界観に息を飲んでいると、ジェットスモークが噴射。

これまた20周年で使用した演出の一つ。

戦火の煙から闘志を剥きだした表情で。楽器という武器を手に曲がスタート。

今夜は、昨年リリースした7枚目のアルバム”Immortal Warriors”のツアー初日。

もちろん1曲目は、アルバム通りの”Degenerate”

貫禄と威厳いっぱいのオーラに満ち溢れた渾身の1曲は、欧州のバンドかというほどの巨大なもの。

オーディエンスが好きな疾走で駆け抜けず、ゆっくりしっかり、威厳ある音で、聴く者を、演奏する現場を支配していく。

 

完全たる演出で自分たちの世界を作ったステージ上から、堂々たるその佇まいと、狂いのない演奏でライヴハウスを征し、フロアいっぱいのオーディエンスは、どんどん魅せられていく。

この作品がリリースされて5ヶ月。

今夜会場に駆けつけたファンは皆、相当に聴き込んでいるだろう。

何度聴いても飽きがこない、傑作。

皆の耳にも馴染んでいるはず。

そのオーディエンス達の期待を裏切ることなく、次はアルバム2曲目の”Wrath”

スピードナンバーで、オーディエンスの心を掻き乱す。

 

この2曲でバンドはフロアを完全に支配。

そして、怒涛のSURVIVEワールドが展開されていく。

 

これから続くツアーに行く人の為、詳しくセットリストは述べないが、このツアーで最強のSURVIVEが観られるとだけ伝えておこう。

それはなぜか。

今夜のセットリストが、1曲を除く全てが、彼らが欧州で鍛え上げ、大きく成長していく中で制作された、6枚目“Human Misery”そして7枚目“Immortal Warriors”から構成されているから。

HUMAN MISERY

IMMORTAL WARRIORS (イモータル・ウォリアーズ)

SURVIVEファンならもう御馴染み、周知の事実だが、バンドのことを知らない人のために、少し説明しよう。

SURVIVEは1998年、ヴォーカル兼ギターのNEMO氏により誕生。

2006年には、日本最大のメタルフェス、“LOUD PARK”に出場。その後も韓国や台湾でのライヴを成功させてきたが、大きな転機は、2012年。イタリアのエージェント、Alpha Omega managementと契約し、大躍進を遂げる。

欧州の大物バンド、BEHEMOTHやKREATORとのロシアツアー、アメリカのベテランOVERKILLとのバルト三国ツアーに、アメリカのフェス参戦。VENOM INC.やSUFFOCATIONとの欧州ツアーなど、多くの欧州ツアーを成功させている。

(参照:http://www.rebel-survive.com/biography/

 

これが何を意味するのか。

 

日本にも素晴らしいバンドはたくさんいる。

今夜登場したバンドはオーディエンスを確実に沸かせた。

若手有望株のHELL FREEZE OVER、カバーバンドだが本家に認められているHATTALLICA、そしてIN FOR THE KILLとどれも素晴らしかった。

 

「次の舞台は、世界だ」

日本のシーンも素晴らしいので、言葉が難しいのだが、やはりハードロックやヘヴィメタルとなると、欧米のシーンの歴史、規模、環境、コミュニティーどれもが凄い。

多くのロックスターが生まれた国々。

アメリカやイギリス、ドイツ…

どのバンドも、これらの地域で誕生した音楽に影響を受け、ヘヴィメタルを愛し、演奏しているのは事実。

 

「世界と闘おう」

2012年に掴んだ、イタリアのエージェントとの契約。

海を渡り、大物バンドとのロシアツアー。

ポーランドのエクストリームメタルバンド “BEHEMOTH” とのロシアツアー「Phoenix Rising Tour」。

立派なバンドをたくさん観てきた目と耳を持つ数千人のファンの前で、自分たちのショーを披露する。

プレッシャーは相当なものだったはず。

しかし結果はどうだ。

この映像の熱気。

日本のバンドが掴んだ、欧州の熱狂だ。


SURVIVE “Phoenix Rising Tour SPECIAL MOVIE”

1つ、また1つ、目の前のショーを一生懸命にこなす。

努力して、試行錯誤して、衣装を用意し、練習し、メイクをし、とにかく一生懸命、1つずつのステージを汗水垂らし、全力で駆け抜ける。

終われば反省し、次のショーをもっと良いものにする。

 

その結果、SURVIVEが得たもの。

子供の頃、憧れ、聴きまくったバンドとの共演。

欧米の大物と過酷なツアーを乗り越え、生まれた友情。

彼らが生まれた国々を見て回り、その土地の料理を食す経験。

海外でのSURVIVEファン。

海外でのヘッドライナーとして立つステージ。

 

このブログ、前回取り上げたバンドは、WORLD END MANだった。

www.anotherstyle.net

冒頭に書いた、

「努力を重ね、たくさんの経験を積んだ結果が人を大きくするし、最強にする」

という言葉。

これは、SURVIVEにも感じる言葉。

 

反骨精神から生まれたSURVIVEというバンド。

本気でやり続けた結果、ついにやってきた世界へ進出するチャンス、METAL BATTLE JAPAN第1回目の決勝戦。

毎年夏に、世界中から何万人ものメタルヘッドが集まる世界最大のヘヴィメタルフェス『WACKEN OPEN AIR』へ出場できるチャンス。

当時、僕もこの現場にいたのでよく覚えている。

SURVIVEのパフォーマンスは完璧に他者を圧倒するものだった。

しかし結果、負けた。

審査員の方から、

「実力でWACKENに出てほしい」

という言葉があったのも覚えている。

納得のいかない敗戦だったが、SURVIVEは決して負けなかった。

その翌年、前述の通り、イタリアのエージェントと契約。

そして得たのは、METAL BATTLE JAPANで優勝してきたどんなバンドよりも濃密な、海外での経験。

一戦、一戦。ステージに上がっては戦い、着実に一つずつ成功を重ね、その努力の結果、世界にSURVIVEという名前を数多く、刻み続けている。

 

2012年に世界進出。

海外ツアーと日本でのライヴの合間を縫って制作され2015年にリリースされたのが、“Human Misery”。欧州のバンドのような風格と威厳を持ったダイナミックさを持ち、メタルヘッドが乗れるアグレッシヴさとメロディーとキャッチ―さを兼ね備えた快作を披露した。

海外ツアーでの経験が大いに反映され、生まれたアルバム。

そして、その後も海外ツアーを重ね、バンドの絆も深くなり、わずかな期間で制作されたのが、この“Immortal Warriors”

こちらももちろん、海外ツアーでの経験が骨となり、血となり、肉となったアルバムだ。

 

この2枚が中心となったセットリスト。

最強ではないはずがない。

 

 この夜、約1時間半。

我々フロアからステージを拝む者たちの興奮は止まることはなかった。

 

このバンド生活。

過酷な生活を直向きに進めてきたリーダー、NEMO氏は、2017年。

体調を崩し、倒れることになる。

lineblog.me

 

無事退院し、その後も予定通り、海外ツアーをこなしている今、完全復帰となったのだが、その時の経験を基に書かれた曲がある。

最新アルバムのタイトルトラックであり、MVにもなったこの曲だ。


Survive – Immortal Warriors MV

 

身体が限界を超えていたことにも気づかず、休むこともせず、バンドを走らせ続けた結果、倒れた。

一度は目の前が真っ暗になったが、僅かに光る先を見出し、再び立ち上がり、仲間と共に再始動した。

そのことを書いた曲。

これには、彼のとてつもない想いが有るのと同時に、我々一人ひとりにも何か同じように感じることもある曲ではないか。

 

「不滅の戦士」

 

この曲にはヘヴィメタルを聴く者がヘヴィメタルに求める強さ、闘争心、何があっても屈せず負けず、自分の人生を歩もうという野心が詰まっている。

 

非常にキャッチ―で、一度聴いたら忘れないコーラスがある曲。

アルバムを聴いていてもしっかりと耳に残り、ファンの皆はきっと曲の背景を想い、グッとくるだろう曲。

 

そう言えば、NEMO氏は、MCにて、SURVIVEファンのことを、
「Warrior」と呼ぼうと宣言した。

トップバッターのHELL FREEZES OVERが、ファンのことを「Hell Raiser」と呼ぶことに刺激を受けたらしい。

この呼称。

SURVIVEへの愛を持つオーディエンスという意味でも、ここで使わせてもらおう。

これから彼らのツアーに行くWarriorsの皆さんは、
是非このコーラスを覚え、バンドと一緒に歌おう!

我々オーディエンスも、バンドと一緒に「不滅の戦士」のような強い人間になった気持ちになれるし、またこんな素晴らしいショーをやってくれるバンドへの感謝の気持ちも込めて。

 

バンドとファンが作る一体感=ライヴ。

 

その力が発揮される素晴らしい曲。

 

 HELL FREEZE OVERは若いエネルギーで全快にヘヴィメタルをぶっ飛ばし、オーディエンスの心にこしたピュアなメタル愛は。

HATTALLICAが継し、モンスター級のヘヴィメタルバンドによる屈強たる曲をオーディエンスに届け、我々の心に宿ったメタル愛は最大に。

IN FOR THE KILLによりその愛は、メタルの要素の一つ、闘争心へとじた。

そしてこれら全てを包み込み、ドラマチックなヘヴィメタルショーへとびつけたSURVIVE

 

ヘヴィメタルの起・承・転・結。

 

素晴らしいバンドたちの。

素晴らしい流れによる。

音楽と生き様のドラマ。

 

メタルが好きでよかった。

メタルがあるから、また僕は自分の人生、一生懸命、戦えるし、戦ってやる。

そう誓えた夜。

 

ライヴハウスに集まったオーディエンス一人ひとりの心にそういう言葉が生まれたのではないか。

ライヴに行き、得たエネルギーで、それぞれ人生を、それぞれの手で花開かせる。

 

こうしてヘヴィメタルを中心にバンドが、ファンが繋がり、人生が前向きに動き出し。

再び、ライヴハウスで皆が集まる。

このサイクルを一つずつ重ねていけば、メタルの炎が消えることはない。

 

SURVIVEは、楽器という武器を手に、

戦乱のこの世の中を、ヘヴィメタルで生き残って(=SURVIVE)きた。

 

見事な中堅バンドは、生み出した曲を届けに日本全国を廻る。

そして新たな海外ツアーも控えているようだ。

 

今後、SURVIVEはどのようにメタルを日本中に広げ、世界にどうSURVIVEを轟かすのか。

楽しみでしかたない。

 

 

【イベントのダイジェスト動画】

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HUMAN MISERY

HUMAN MISERY

 
IMMORTAL WARRIORS (イモータル・ウォリアーズ)

IMMORTAL WARRIORS (イモータル・ウォリアーズ)

 

  

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この記事を書いた人
音楽ライター「監督」

音楽ライター。昭和の末に生まれ、平成の大阪で育ち、革ジャンを羽織り、ロックシャツを着て、ベルボトムに下駄で東京の街を闊歩する。「音楽は耳で観る映画」をテーマに、音楽から感じるイメージを文章にし、ライヴレポートやライナーを書いています。

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