【方程式のない音楽世界、King Crimson/Uncertain Times Japan Tour~ある一日を振り返る~】

音楽ファンの皆さんへ。

好奇心旺盛で、新しいことを知るワクワクが大好きな人へ。

普段、J-POPや洋楽でもメジャーな音楽やダンスミュージックをよく聴く人へ。

 

そんな人たちにうってつけの音楽がある。

プログレッシヴ・ロック。

1960年代後半、欧州を中心に誕生し、北米でも盛り上がり、世界中に広がっていった。今の尚、進化を遂げ、世界中の人を魅了し続けているジャンル。

その名の通り、ロックを基調とした音楽だが、攻撃的というより、挑戦的。

ジャズやブルーズ、クラシックな音色やオーケストラ、はたまた、映画のような世界観など、ありとあらゆる音楽を吸収し、革新的(=プログレッシヴ)な音楽を発明していくジャンル。

 専門用語をあまり使いたくないし、ジャンルに縛られず、広く音楽として語りたいのだが、今日は許してほしい。

 プログレッシヴ・ロックというジャンルに属するバンドは、多種多様。バンドそれぞれがジャンルといっても過言ではない。

例えば、普段我々が耳に慣れているポップス。

これら音楽はおおよそ、流れというものがある。

「Aメロ→Bメロ→サビ」

ただし、このプログレッシヴ・ロックの世界、そんな決まった進行が無い!

そして、曲によっては、10分、20分、30分…はたまた、レコード1枚50分で1曲なんてものもある。

どんなバンドでも超絶技巧のテクニックが聴かれ、そのメンバーで紡がれる音楽は、次に何が来るか予想がつかない!

そして楽器も多種多様。サックスやフルート、ホイッスル、メロトロンにテルミン、シタール…

「このリズムの先には何が来んの!?」

「おいおい、ロックやのにフルート、サックスが出てきたで!」

こんな感じで、好奇心を駆り立てられ、ワクワクが止まらない音楽。

それが、プログレッシヴ・ロックの世界。

 中には取っ付き難い、難しい音楽もあるが、けっこう馴染み易いものが多い。

というか、好奇心があればハマれる、それがこの世界。

世界でもけっこうファンが多い。

英国のPink Floydが1973年にリリースした8枚目のレコード、”Dark Side Of The Moon(邦題:狂気)”は、アメリカのビルボード200というチャートに15年間(741週連続)チャートインし、ギネス記録を樹立した歴史的なロック作品である。
(参照:クリムゾン・キングの宮殿 – Wikipedia)

(参照:https://www.creativeman.co.jp/artist/2018/12KingCrimson/

 そんなプログレッシヴ・ロックの仲での重鎮。

英国のKing Crimsonというバンドの日本ツアーを観てきた。

1968年結成と今年結成50周年。結成翌年にレコードデビューなので、来年はデビュー50周年となる大ベテランが、日本を横断する。

ここ最近では異例、11月27日から12月21日まで約3週間の大規模な日本ツアーをやってのけた。

北海道、宮城、東京(7日)、名古屋、石川、大阪(2日)、広島、福岡の大巡業。

この時代、ここまでの規模でツアーする来日バンドはいない。

どこも、2,000~3,000人規模の会場で、追加公演も出ている訳だから。

 

そしてもう一つ、このバンドのことを知らない人に言っておきたいこと。

彼らは、あの世界一のロックバンド、The Beatlesを首位から陥落させたバンドなのだ。

デビューアルバム“In The Court Of The Crimson King”は、

「ビートルズの『アビイ・ロード』をチャート1位から蹴落としたアルバム」

と言われている。実際には、全英オフィシャルチャートでは最高5位、全米ビルボードチャートは28位らしいのだが、そう言われてもおかしくないくらい、芸術性に富んだ、誰にも創造できない、想像つかない、美しさと恐怖と狂気を兼ね備えた作品だった。(参照:クリムゾン・キングの宮殿 – Wikipedia

 彼らの音楽の何がそこまで人を魅了するのか。

リーダーであるロバート・フリップがこの50年間、絶えず挑戦を続け、様々な音楽を吸収し、バンドを進化し続けたこと、ミュージシャン全員が卓越した技量を持っていること、そしてその個性を巧く統合させ、一つの巨大なモンスターをステージ上で創造すること。

こういったようにバンドの凄さを言葉に表すことはできるが、僕よりも圧倒的にKing Crimsonを聴き込んでいる人、知識を持っている人は沢山いると思う。

そこで、僕のブログの原点に立ち返ろう。

これは、音楽をジャンルレスとし、「音楽=耳で観る映画」と考え、例えばメタルの話をしたとしてもメタルファンだけではなく、音楽ファンに届ける文章を書くことをテーマとしたブログだ。

つまり、どんな音楽ファンでも想像でき、面白そう、聴いてみたいと思ってもらえるブログを書くこと、これがテーマ。

 ということで、今回は、僕が観た12月17日(月)渋谷オーチャードホールでのセットリストを振り返り、YouTube映像と共に、曲を紹介していこうと思う。

なんてったって、「Uncertain Times(不確かな時代たち)」と銘打ったツアー。

50年のキャリアのどこかを切り抜いたライヴではなく、半世紀を網羅したもの。

このセットリストを伝えればきっと、どんなバンドか、どんな音を創造し、長きに渡り、世界中を魅了し続けてきたのか、お伝えできると思う。

 振り返る前に、僕のKING CRIMSON体験した感想を一言。

「音楽史を一気に観た気がした。人類誕生の頃、たぶん類人猿たちの音楽は多種多様なものを叩くリズム。で、弦楽器、管楽器、ピアノが生まれ、オーケストラとなり、ジャズが生まれ、ロックが生まれ、現代の時代性の中に全部突っ込むと、こんな幾何学模様みたいな音楽が生まれるんやなー」

ということで、行ってみよう!

 

まずは、リーダー、ロバート・フリップ御大からメッセージ。


Robert Fripp from King Crimson Video Message to Japanese fans

続いて、今回のラインナップ。

Robert Fripp – Guitar
Jakko Jakszyk – Guitar, Vocals
Mel Collins – Saxes, Flute
Tony Levin – Basses, Stick, Backing Vocals
Pat Mastelotto – Acoustic And Electronic Percussion
Gavin Harrison – Acoustic And Electronic Percussion
Jeremy Stacey – Acoustic And Electronic Percussion, Keyboards
Bill Rieflin – Mellotron, Keyboards, Fairy Dusting

(参照:https://www.creativeman.co.jp/artist/2018/12KingCrimson/

セットリストはこちらを参照しました。
King Crimson Concert Setlist at Orchard Hall, Tokyo on December 17, 2018 | setlist.fm

 

1曲目:Hell Hounds Of Krim


King Crimson drummers solo, Elstree, 2014

世界中何万、何億とあるバンドと違う点がこれ。

一番奥に陣取るドラムスが、最前にある!それも3セット!

彼らによるリズムで1部、2部共にスタート。

思えば人類の初めての楽器は打楽器。骨や石、木を何かにぶつけ、音を作り、それが連なりリズムとなる。仲間とリズムを作り合って、ワクワク楽しむ。

2曲目:Discipline


King Crimson – Discipline (from 2012 DVD Live in Argentina 1994)

ビミョーに音をずらしながらユニゾンするギターとチャップマン・スティックとドラムス。この異質なリズムが何とも心地良く、冒頭の2曲のリズムはゆっくり、ゆっくりと観客の魂を引っこ抜き、ホール内上空でもてあそぶ。

3曲目:Cirkus


KING CRIMSON – CIRKUS – LIVE AT JACKSONVILLE – 1972

ここでやっとヴォーカル登場。

1曲目、2曲目のリズムで完全に魂はKing Crimsonに持ってかれ。この優しいヴォーカルが入り、もう我々観客の顔はうっとり。

 

4曲目:Lizard(Bolero, Dawn Song, Last Skirmish, Prince Rupert’s Lament)


King Crimson – Lizard – Lizard Part 2/4 (Bolero)

フルート、サックスが光る。

5曲目:One More Red Nightmare


King Krimson: One More Red Nightmare

ヘヴィなリズムと挑発したヴォーカルラインで、観客を嘲笑う。

6曲目:Red


Red – King Crimson (Live in Japan) (HD)

大学の頃、中古レコード店で何気なく買ったこのCD。このバンドとしては珍しい3人編成期(ゲストミュージシャン有)だが、ライナーを読むと面白い言葉が。ロバート・フリップは「メタル」と評していた。

「KING CRIMSONのどこがメタル?」

と思っていたけど、今回聴いて深く納得。ゾクゾクと迫りくるヘヴィなギターを中心としたリズムは巨大なモンスターとなり襲ってくる。この絵は完全にメタルだ。

 7曲目:Moonchild


King Crimson – Moonchild

King Crimsonの真骨頂の一つ。哀しみを一級品の芸術に昇華する力。

1st アルバム収録のこの曲は、我々を夢の世界、クラシックな童話の世界へ誘い、優しく包み込む。

リンクは、ヴィンセント・ギャロによる傑作映画より。

この映画、YESも使われていて、プログレファンにはもう涙もん。

8曲目:In The Court Of The Crimson King


King Crimson In The Court Of The Crimson King live

同じく1st アルバム収録でどう作品ラストを飾る大作。

クラシックの傑作を聴いているような、堂々とした、そして美しい音楽。

この曲でも他の曲でも光るのは、メロトロンの使い方の巧さ。

これもKing Crimsonの真骨頂の一つ。

9曲目:Neurotica


Meltdown – King Crimson – Neurotica (Live Mexico 2017)

サックスの艶と狂気っぷりを堪能できるヘヴィな一曲。

このリンクは、映像なく音源のみだけど、今回の来日メンバーと同じなので、今回のジャパンツアーの空気を感じてもらえるはず。

 10曲目:Indicipline


King Crimson – Indiscipline – Live in Mexico City

こちらも同じく、今回の来日メンバーと同じ。それも、映像有り。

3人のドラムバトルもお見事だが、それを楽しむ他メンバーの表情が素敵。

技巧派が技巧派の闘いを楽しんでいる。

 

~1部終了。20分の休憩の後、2部へ~

 

11曲目:Devil Dogs Of Tessellation Row


Meltdown – Devil Dogs Of Tessellation Row – King Crimson (Live in Mexico 2017)

1部同様、3人のドラムスからスタート。

このライヴでは3人ドラムス用にアレンジされているけど、どこまでが打合せで、どこからがその場の即興なんだろうか。そしてここまで見事に揃う3人の呼吸。恐ろしい。

 12曲目:Fallen Angel


John Wetton and Eddie Jobson Fallen Angel (King Crimson)

こちらはしっとり美しい声を堪能できる優しい曲。

映像は、この曲が収録されていたアルバム”Red”でベース兼ヴォーカルを担当していたJohn Wettonが2012年、Eddie Jobsonと行ったもの。

絵本が持つちょっとダークな夢世界とは、こんな曲のようなものなのだろう。

13曲目:The ConstruKction Of Light


King Crimson – The ConstruKction Of Light

独特なトーンの各楽器がビミョーにリズムをずらし絡み合うことで、えげつないほどの緊張感を生むのだが、これが美しい。

超絶技巧美とはまさにこれ。

狂気と美と緊張…こんな空気を持つバンド、他にはない。

14曲目:Easy Money


Easy Money

巨大なモンスターがのっしのっしと練り歩くような曲。

確かこれは昔CMに使われていた。

King Crimsonを意識する前の幼き僕の脳裏にも、「かっこえぇ」としっかり刻み込まれていたようで、後々、King Crimsonを研究する中で出逢い、「あぁ、Crimsonやったんか」と。

この映像もほぼ今回のメンバーと同じ。

ヴォーカルのスキャットが絶妙な楽器となるのが、この曲の魅力の一つ。

 15曲目:Cadence & Cascade


King Crimson Cadence & Cascade Greg Lake Vocal

King Crimsonというと、威風堂々たるリズムとメロディーが際立つバンドと認識していたので、こんな牧歌的な、優しいアコースティックソングがあるなんて知らず、いい意味で拍子抜けた。オリジナルは、グレッグ・レイクのヴォーカル。そのヴァージョンを載せよう。

今これを書いているのは日曜の朝なのだが、この曲にピッタリの時間。

 

16曲目:Radical Action (To Unseat the Hold of Monkey Mind)

(aka ‘Radical Action I’ abbreviated + ‘Radical Action III’)

17曲目:Meltdown

18曲目:Radical Action Ⅱ

これらは音源見つからず。いろいろと調べたが、たぶん2015年からツアーで演奏されている、ライヴ盤では収録されているけど、オリジナル録音はない曲かな?

 

19曲目:Level Five


King Crimson – Level Five (Live in JAPAN)

さぁ、本編最後。

とてつもなくヘヴィに8人の音が絡みつき生まれる狂美を楽しもう。

モンスター最後の大暴れ。

 

~アンコール~

 

20曲目:Starless


King Crimson – Starless

ほぼ今回と同じメンバーによるこのKing Crimsonの究極のドラマを。

独特のロバート・フリップのギタートーンが織り成す優しいメロディー。

繊細なヴォーカル。

踊るフルート。

優しい曲は一転し、狂気へと突っ走る。

 

~番外編~

今回の日本ツアーで演奏していたけど、僕が観に行った時にはやらなかった、大好きな曲を2つ。

①曲目:21st Century Schizoid Man


King Crimson – 21st Century Schizoid Man

King Crimsonと言えばこの曲。

デビューアルバムのオープニングナンバーにして、50年続くキャリアのスタート。

こんなに恐ろしく、そして壮大で、緊張感とワクワクをもたらす、インパクト溢れる曲はあるか。

冒頭のインパクト、中盤のサックス、一呼吸置いての全楽器ユニゾンが絶妙。

 

②曲目:Larks’ Tongues In Aspic, Part Two


King Crimson – Larks’ Tongues In Aspic, Part Two – 1973

ヘヴィなリズムでジワジワ攻め込む曲。

楽器の使い方が絶妙で、ヴァイオリンのへヴィな旋律が美しい。

 

以上、全20曲と番外編2曲。

ここまでお付き合い、有難うございます。

 

King Crimson Uncertain Times Japan Tour 2018に参戦した皆さんは、当日の感動を思い出したのではないですか?

King Crimson初体験の方、予想だにしない曲の数々、いかがでしたか?

 

ほんま、世界にはとんでもない音楽創造者たちがいるものだと。

呆気にとられて、いい言葉が見つからない。

作曲、演奏は凄いことは分かってもらえたが、もう一つ。

毎日の演奏する曲のリストは、当日の朝、リーダーのロバート・フリップ御大が決めるらしい。

だから、連日チケットを握りしめ、会場に向かうコアなファンは飽きず楽しめるのだが、ミュージシャンにしたらかなり手強い仕事だろう。

しかしどうだ、彼ら8人。非常に楽しんでいる。

ただ巧いだけではない、その向こう、かなりの高みの世界に住んでいる天才たち。

打楽器のリズムから始まり、クラシックのような風格と大曲、ロックやジャズ、フォークといった近代音楽を、天才音楽家が演奏したらKing Crimsonになる。

どうだろう、地球上の音楽史を完全に網羅している。

そして、曲は、狂気と緊張が張り巡らされ、哀しさと美しさが見えてくる。

 

つまりはこういうことじゃないか。

音楽が進化し続ける限り、デジタルではなく生身の人が演奏する音楽が進化し続ける限り。

そして、時代が混沌とし恐怖と混乱が続くもその中に必死で生きようとする美が人々の心に存在し続ける限り。

King Crimsonというモンスターは生き続けるだろう。

リーダーのロバート・フリップも72歳。

いつまで続けてくれるか分からないが、この先も彼を、彼の音楽を、一級品の芸術品を楽しんでいこう。

 

ツアーに参戦した皆さん。

帰路についた時の夜空は、星見えず(Starless)でしたか?

それとも、子供のように小さな星(Moonchild)が見えましたか?

 

追伸:大学生の頃。初のバイト代で、父親をライヴに誘った。ロックを教えてくれた父親に、僕がプログレを教えようとのことで、Porcupine Treeのライヴへ行った。その前座がなんと、ロバート・フリップ御大。1人ステージに登場し、椅子に腰かけ、ギターを演奏するのだが、King Crimsonの曲でもなく、一つ一つ音を出してはアンプを調整するというかなり実験的なもの。

約30分続いた実験で、僕は何とか大丈夫だったが、仕事帰りの父親は寝入っていた。

 

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この記事を書いた人
音楽ライター「監督」

音楽ライター。昭和の末に生まれ、平成の大阪で育ち、革ジャンを羽織り、ロックシャツを着て、ベルボトムに下駄で東京の街を闊歩する。「音楽は耳で観る映画」をテーマに、音楽から感じるイメージを文章にし、ライヴレポートやライナーを書いています。

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