静かな湖に石を投げいれたら、波が静かに広がる。
水面の葉っぱは揺らめき、水中に生息する生き物や植物は喜び、湖の縁まで、石の力は伝わっていく。
静かな湖に対し、固い石、人工ではなく自然が生んだ強固な石は脅威だろう。
この石がただただ恐ろしいものではなく、魅力的で、純粋で、感動を生むものだったなら…
僕のHELLHOUNDのイメージ、魅力はこれ!
自宅のリビング。
もうすぐ1歳になろうとする愛息子・愛娘が、ある日突然、つかまり立ちをした。
ソファーにつかまり、立とうとするも転び、立とうとするも崩れ落ち、しかし負けずにソファーにと対峙し、とうとうつかまり立ちに成功。
その姿に喜ぶ父、感動して泣く母、すぐさま連絡して感動を両親、兄弟と分かち合う。
純粋な心で戦う姿がもたらした感動が波及していく。
子供が運動会で懸命に走る姿も同様。
1位になれば、その感動はクラスメートに、その一人一人のご家族にも波及。
高校野球はどうだ。
汗水垂らして、学業と両立させようと努力する日々を過ごす高校生活。
朝練、学業、夕方のクラブ活動は暗くなっても照明を照らして泥だらけになって頑張る。
その後に勉強だ。
そして、地方予選に挑み、勝負に出る…
甲子園出場を決めようが決めまいが、努力をする者の闘争心、また背負い込む思いは、感動を生む。
その感動は、仲間、監督、高校、その家族、新聞記事やテレビ、数々のメディアに取り上げられれば、もっともっと広がる。
なぜ、高校球児たちはそこまで辛い生活を送りながら、頑張れるのか。
答えは簡単。野球が好きだから。
好きなものを極めたい、勝利を掴みたい。できれば、学生たる者学業も疎かにせず…
純粋なその心が努力も可能にするし、何事にも恐れず、戦える。
この純粋な心が感動を巻き起こし、パワーを、ポジティヴな心を与える。
(引用:https://www.metal-archives.com/bands/Hellhound/30535)
枕が長くなってしまったが、今回、紹介するバンドHELLHOUNDに触れる度、僕は、本当に純粋な心、澄み切った心を持ったバンドだと感じてきた。
純真は、上述の通り、とてつもない力をもたらす。
しかし一方で、この不条理極まりない、グレーばかりな世の中に、繊細な心で対峙するとなかなか難しい場面が多いのも事実。
表裏一体なその繊細なバランスに成り立っていること。
これもまた魅力であり、バンドのドラマをより一層強くする。そう強く信じている。
実際、僕自身にも似ているところがあって、そんなバンドの話に触れ、彼らが生み出す爆発の恐ろしさに感動している。
2002年、Crossfire (Vo./G.) を中心に結成されたバンドは、2018年6月、6年6か月振りに4枚目のアルバムをリリース。
そして、自身が毎年夏に開催する企画 “LONG LIVE THE LOUD”にて、アルバムリリース東名阪ツアーの幕を開けた。
(引用:https://twitter.com/hellhoundmetal/status/1011566794383872005)
“THE OATH OF ALLEGIANCE TO THE KINGS OF HEAVY METAL/鋼鉄の軍団”という4枚目のアルバムタイトルが表わすように、
彼らの一挙手一投足には『へヴィメタルへの純粋な愛、敬意の念』に満ち溢れている。
ツアー初日の東京は、見事なまでの、へヴィメタル愛溢れるエンターテイメントショーであった。
2018年7月14日。
場所は、東京、吉祥寺。
この日は、主催者であり主役のHELLHOUNDの前に3バンド。
各バンドが素晴らしい演奏でイベントを盛り上げていく。
Lipstick、ZERO FIGHTERの熱演に続く、3バンド目の兀突骨が演奏開始。
「川越の残虐王」と呼ばれ、国内外で活躍するこのバンドに前々から興味があったが、なかなかきっかけがなく、この夜が初見であった。
エクストリームメタルにスラップベース、武士のような佇まいと異様な世界観に、どんなものか楽しみにしていた僕は、ステージ下手前方に陣取った。
また近い将来書くであろう彼らの記事にてその姿を描写するが、圧倒的画力を持ったバンドに僕は完全に陶酔していた。
しかし、彼らの演奏にクレイジーになっていたのは、僕だけではない。
本日のメインアクト、HELLHOUNDの面々もキッズのようにステージを見つめていた!
彼らは次に演奏する準備にとステージ下手(しもて)に集まってきたのだが、Crossfire氏は首を突き出し、食い入るように、兀突骨の演奏に見入っていた。
Blackwind氏(Ba.)とLucifer’s Heritage氏(Gt.)は腕組みし、ステージを静かに見つめる。
僕からは彼らの背中しか見えてないが、きっと表情を想像するに、
「たまげたな、この演奏!」
「今回呼んでよかった。この熱きエクストリームメタル愛に満ちた演奏。素晴らしい!」
「しかし、俺たちも負けないからな!」
という顔をしていたはず。
HELLHOUNDの面々は本当に純粋。
大きな身体をした、キッズ。
子供の頃大好きだったヘヴィメタルへの愛を、ただ真っ直ぐな好きという心を今も持っている。
さて、兀突骨も終わり、転換。クラシックメタルが会場内を流れる。
きっと場内にいるお客さんも皆知るであろう、ベタな選曲、
まさに名曲の数々に皆を興奮させ、HELLHOUNDへの期待を高めていく。
場内、暗転。
ティンパニのリズムにより、ダイナミックなドラマを期待させるアルバム1曲目がもちろん、今宵のショーのオープニングSE。
心に体に、一つずつ点火していくかの如し。我々の心奥底に眠る闘志、へヴィメタルを呼び起こす。
初めて聴いた時、香港にある大手映画会社のジングルを思い出した。
ブルース・リーやジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウにジェット・リーらを輩出した会社。
小学生の頃金曜ロードショーでよくジャッキー映画を観ていたから、ふと思い出した。
SEのリズムによる場内の熱気が沸き上がってきたところで、バンドが登場。
歓声と共にステージに迎え入れられたメンバーは、それぞれのポジションにしっかりと立ち、客席に背を向け、時を待つ。
ドラムスのカウントと共に、”The Oath Of Allegiance To The Kings Of Heavy Metal/鋼鉄の忠誠“へ。
パワー溢れるネスをスピード良く切り込んで切る攻撃力満点な一曲で、場内のボルテージは最高潮に。
漢気溢れるコーラスもフォーメーションも、そして、早口言葉のようなサビで、我々の心を鷲掴み。
続くは、アルバム通り、“Metal Nation/鋼鉄の軍団”。
ガラッと変わったミドルテンポナンバーであるも、へヴィメタルのお決まりと言っていい一発。
どっしりと地に足を付け、仲間と息が完璧に合ったリズムにコーラス、胸を張り堂々と歩く一団の姿が目に浮かぶ一曲は、まさに邦題通り、『鋼鉄の軍団』。
実は、このアルバムから新布陣となった。ドラムスの変更である。
そのお披露目と言わんばかりに、先行して紹介されたのが、次の曲、“Speed Metal Hell/スピードメタル・ヘル”。
その新メンバー、Mountain Kingのドラムソロから始まるこの一曲は、へヴィメタルファンならニンマリとしてしまうMVに仕上げっているが、ライヴでも本当に気持ち良い。
各メンバーのソロが配され、
HELLHOUNDの旨み成分満点だからだ。
“Interlude/哀愁のウォリアー”の曲名通り、哀しみに満ちたメロディーのインストを披露。
次は悲哀のヒーローの叫びと言わんばかりの深みあるイントロから始まる、“Requiem For Warrior/戦士のレクイエム”へと続く。
この曲の、哀愁を内に秘め、歯を食いしばり戦おうとするようなイメージのメロディーがたまらなく好きだ。
その後も、新作からの楽曲を中心にどんどんショーは進んでいく。
Crossfire氏の声は、まさにダイアモンドの王者のような声。
光り輝き、鋭利過ぎて殺傷力を感じさせるハイトーンを轟かせ、MCでも観客の心をバッチリ掴む。
新加入のMountain Kingは、緩急ついた、ヴァラエティ豊かな新曲に対し、それぞれの曲に合ったリズムパターンを見事に作り出している。
ライヴではより一層ラウドに聴こえ、新曲がリズムの面でも面白いアルバムだと証明。
Lucifer’s Heritageはいつものように涼しい顔でソロを決めまくる。
一切、ぶれること無く、堅実に役割を果たしていく。
今回バンドメンバーで一番ビックリであったのは、ベースのBlackwind。
サウスポーのベーシストの為、フォーメーションを組めば見事で、かなりアクションも多く、動き回り、ステージアクションに活気があるのはこれまでも感じていた。
今回僕は下手の最前、つまりベースの目の前に陣取った為、そのプレイを終始見ていたのだが、彼の指はベースのネック上を縦横無尽に動き回り、かなり弾きまくっていることが分かった。
楽曲のボトムをキープしつつも、時にツボを押さえた『弾きまくり』を差し込み、曲にパワーを、観る者に「ワオ!」を与えている。
最近ベースが大好きな僕は思わず、心の中でガッツポーズし、「ベースヒーローがいた!」と深く頷いた。
過去作品より2曲で本編の幕を閉じ、すぐさまアンコールかと思いきや、マイクスタンドが多数セット。
何が始まるのかと期待に胸を熱くしていると、続々と可愛い女性が…
そう、新譜をヴァラエティ豊かな一枚に仕立てた要因の一つでもある、パーティーソング、
“Heavy Metal Magic/ヘビーメタル・マジック”がここで披露される。
それも今宵はリリースパーティー。やれることはやり切り、自身を、そして、お客さん皆を楽しませる精神のバンド。
アルバム同様、女性コーラスを入れ、徹底再現。そう、メタルってただ激しい、爆音…が全てではない。
こんな、男も女も皆へヴィメタルという音楽に惚れ、楽しくコーラスし、笑顔でダンスする。なんて一曲もある。
へヴィメタルとは、撃や怒号だけではない、笑顔にもなれる音楽であるということも忘れてはいけない。
アンコール2曲目は、バンド初のバラード。それもピアノバラード。
へヴィメタルへの愛、想いを詞・曲に注ぎ込み、愛情込めてドラマチックに書き上げた一曲。
アルバムでもプレイした、ゲストキーボーディストのEmerald Beastが登場し、感涙必至の名曲を完全再現。
荘厳なピアノから始まり、切ないギターメロディーから成るバラードは、
一転、意を決した男が涙を振り絞り、明日へ向かい走り出すパワーメタルへと変貌し、
最後には、純粋なへヴィメタルへの愛情が溢れ出す。
ピュア過ぎる愛が故、溢れんばかりの気持ちが、バンドを更なる高みへ…。
ハイトーン、ドラム・ベースのスピードリズムにギターソロへと昇華させる。
お決まりのアンセム、“Metal Warrior”で締めるも、完全にお客さん全員をへヴィメタルという魔法で虜にした結果、場内から再登場を求める声は止まず、2度目のアンコール。
“Mr. Heavy Metal”という我々皆のことを歌った一曲で締めた。
振り返り、場内を見渡せば、皆、笑顔。
何より、いつもは見ないような若いお客さんも多かった。
31歳の僕もまだ若い方だとは思うが、もっともっと若い、20代前半と思しき観客がそこにいた。
きっと彼らも、HELLHOUNDと初めて出逢ったあの当時の僕のように、この夜のステージが、ずっと心に残り、
「へヴィメタルってかっこいい!」
「HELLHOUNDって楽しい!」
という思いが消えず、
またHELLHOUNDのライヴに、へヴィメタルのショーに、ライヴハウスに、足を運んでくれることを願いたい。
「HELLHOUNDと初めて出逢った『あの当時の僕』のように…」について、
そして、バンドの純真についてもう少し深く感じた僕なりの物語を、お送りする。
本当は一発強力なものを書き上げたかったけれど、熱量を込めて書くと文章量が余りにも多くなってしまう。
次回も濃い内容でお送りするので、お楽しみに!
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